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ないものねだりのろくでなし

極私的エロス



「極私的エロス」


 まず、現代を生きる私としては、非常に違和感のある映画だった。主人公の彼女は男との生活から離れ、ひとりの人間として自立したいというような思いがあったのだと思うが、妊娠・出産というものを通している点で、結局彼女は女性としての強みや凄みを持ってきている。つまり、人間として自立するのではなく、女性として自立する、という男たちへの決別のように見えた。たとえば、男性である監督が前妻と後妻が話している姿を遠くから撮っているのを見ると、女たちがまるで男という敵を見るかのように団結しており、男が弱々しすぎ、女がでしゃばりすぎているように感じたのである。つまり現代を生きる私は、男と女はただそれぞれの役割があり、決して対立する立場ではなく、そこに優劣もないと思っている。しかしやはり30年前はそれだけ女性にとってわだかまりのある時代であったのだろう。

 ただ、彼女の持つパワフルなエネルギーは、毎日安定し、同じような時間を過ごす私たちにとって、とても魅力のあるものであることに変わりはない。いつの時代であろうと変わらないだろう。つねに己に向き合い、相手に向き合い、社会に向き合う。生きていてつい忘れがちなそれを、彼女は思い出させてくれる。誰かの母であるときも誰かの娘であるときも誰かの恋人であるときもストリッパーとして踊っているときもタケダミユキはタケダミユキだった。