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ないものねだりのろくでなし

無理矢理



無理矢理 / 劇団、本谷有希子 吉祥寺アクトシアター

こんなに興奮した演劇は初めて。笑いもあり、怖ろしさもあり、たいへん面白く素晴らしい演劇だった。

誰が正常なのかなんてわからない。人は自分が一番正常だと思っている。だけど人は一人で生きていない。絶対に自分と他人は関わっているし、むしろそっちのほうが現実なのだ。

前作の「乱暴と待機」は綺麗で救いのある終わり方だった。また「思ってもないことを言おう」や「めんどうだけど、大丈夫」というせりふによって二人ともある種正常であるし、互いに何か共有したものを持っている。だが今作ではその共有していたはずのものの実体がぼろぼろと崩れるのである。しかも「正常な」自分と「正常な」他人がコミュニケーションをとっていると思い込んでいたその線上に、正常じゃない他人を見つけ、それによって正常じゃない自分が浮かび上がるのである…。

そして現実はどちらなのかと言うと・・・おおっおそろしくなる。。だけど面白いこともいっぱいある。非科学的現象だって死にたいって思うことだってレッサーパンダが立つことだって誰かの言った嘘だって、現実になることが可能なのだ。そういうことが音楽を聴かせなくしているし、聴かせてもいる。世界はいつだって「無理矢理」なのだ。

私だってやっぱり大好きな音楽を聴きたいけれど、正直エリオットスミスは本谷さんにやられた・・・これは私の個人的な問題だったんだけど彼の音楽(しかもXO)は今までの感情全てをよみがえらせてしまう。一番きたない思いも一番うつくしい想いもあらゆる微細な感情も、、音が、身体に溶けてしまった。これも現実。