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ないものねだりのろくでなし

金沢21世紀美術館のこと



去年の12月にbunkamuraで行なわれたポップアート展について私は、

ポップアートは、大量生産大量消費や、世俗的・借用主義などなどの悪趣味に走りがちですが、美術界のいわゆる「良い趣味」と日常の間にある壁を意図的に取り払おうとしているところがとても好きです。・・・中略・・・ですから現代は、現代にふさわしい、またさらに新しいアートがあるはずだと私はほんとうに確信しました。 」

と書いた。この金沢の美術館にはまさに、現代にふさわしい、だからこそあまりこういう言葉を使いたくないのだが、まさに”現代芸術”が存在していた。それは”空間”なのか”オブジェ”なのかの境もないようなものであった。

たとえば、木で造られた真っ白いバラの造花が、真っ白な壁の上のほうに無造作に飾られている。これはどこからどこまでが作品なのか・・・・?????私たちは美術館の中を歩いているだけで、バッタリと作品に出会うのだ。有名なレアンドロ=エルリッヒの”スイミング・プール”もどこから地下にいけるのか、なかなかわからない仕組みになっている。

なかでも私が一番気に入ったのは、トゥットフオコの”バイサークル”という作品。これは彼が彼の友人らをイメージして作った数々のカラフルなハコ自転車に乗れるという作品だ。これらには”ナターシャ””ユーコ”など名前までついている(私は”アレッサンドリア”に乗った)。ここには美術界のいわゆる「良い趣味」と日常の間にある壁を(意図的に、かはわからないが)取り払っている事実がある。もちろん全ての作品がそうなのだ。

監視員の方々はとっても気さくで、”あと1カウントで起き上がるから見ててごらぁん””すごいきれいだから是非中に入ってみてください””これつけてみる?こういう穴があったら気軽に差し込んでみてくださいね!”(なにが?と思ったらとりあえず行くべし。)と声をかけてくれたり、作品について人と会話ができるのが楽しいです。日本の美術館は監視員が無愛想だったりすることが多いので”ありがとうございました”が言いにくいってこと結構あると思うが、ここの美術館は全くそんなことがない。

そうだ、最後に率直な感想。この美術館では子どもたちに無料でミュージアムクルーズをさせている。私もたまたまそれに来ていた中学生らとドッキングした。私がマシューバーニーの作品を見ていたら金沢市の一般のご婦人が話しかけてくださって、そのことについていろいろと話を聞いた。で、中学生らが来ると彼女はマシューバーニーについて説明しだした。いや説明?「これなんに見える?対照的でしょ、やわらかいかんじもするわね。このマシューさんはとっても不思議なオブジェを作ることで有名なのよ〜裏からも見てごら〜ん」といった具合である。金沢の子どもたちがうらやましかった。