安井仲治の言葉

想過て技術及ばざる點の多くあるのを遺憾に思ひます。---中略---元來人間といふものは、始終強い刺戟ばかりでは生きて行かれるものではありません、力強い表現の一面には又靜かな安息があつても少しも矛盾はせぬと思ひます。しかし、私はこの花の畫もその他の畫も、寫すものは異つてゐますが、扱ふ信念はいづれも同じ氣持で寫してゐることを言ひ添へて置きます。

技法は簡易になり「寫眞家」と云ふ特殊な稱呼はなくなり、全く普遍化します。しかし其藝術としての立場は恐らく餘り進歩しますまい。---中略---人間のする事の藝術性は、千年前と比較して横には廣がるけれ共、深くはなつてゐない事に誰でも氣付きます。一人の天才の仕事で、吾々凡人の想像力は完全に覆され得ることをせめてもの慰めとして居ります。

きようの寫眞より明日の寫眞よろし（寫眞家四十八宜より）