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ないものねだりのろくでなし

新宿泥棒日記



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新宿泥棒日記 / 大島渚

大島渚の映画というのは絞死刑しか見たことがなかったので、驚いた。始まり方なんかほぼゴダールかと思った。話が進むにつれて比べ物にならないほどストーリーがドギツイのでゴダール云々は忘れましたが…。

どうでもいいんですけど、横尾忠則さんも唐十郎さんもかわいすぎますね。あれでバタイユとか人体性解剖図説とかロランバルトとか盗んでる万引き犯だったら私なら許すね。ああそれじゃ話が進まない。

演技なんだかアドリブなんだかというのは、下手だがしかし味のあるセリフの言い方というか、それは俳優というより監督がすごいのかもしれないけれど、雰囲気があってとても良かった。「ばいばい」ひとつの言い方にユニークなすごくすてきなものがあって、そういうのは今の映画にはまずないし、大体がダイコンとか言われてしまう(というかそうとしか言えないような)ものだから見向きもされないのかもしれないが、私はこの監督のセンスはとても好きだ。

しかし鳥男の「くやしかったらぬすみましょう!」だとか「真の男性はセクシャルであると同時にそれ以上であるが、真の女性はセクシャルである以外に何者でもない」だとか「僕はウメ子からセックスを盗みたかったのだ」いうセリフ、ウメ子の「ぜんぜん」という言葉もゴダール的ではあると思った。男と女の、ある種の戦いだったり依存だったりそういうものの軋轢を映そうとしているのだろうと私は感じた。

さて、上のシーンは輪姦されたウメ子と殴られた鳥男が朝5時の新宿を歩く場面なのだが、ブルーが非常に美しくて綺麗だった。鳥男の斜に構えた様子とウメ子の放心の佇まいとがブルーの背景に白いベルトによってだけ繋がっている。手と手ではない。二人の関係はこの通り全くの真っ白であり、うわべもうわべだし、だがしかしお互い弱くつながっているのだ。

二人は唐十郎状況劇場で演技をする中で、徐々に自分で自分を受け入れていく。最後に、ウメ子が自分に起きたすべての事を、自分に起きた複雑なすべての関係を「それはできごとだから」と語るシーンでようやく二人は誰かに心を開くことと、誰かを受け入れることができたのである。ああよかったよかった。

ところでここでも雨論が。「雨っていうのはいいもんなんですよ 突然降ると女は帰るのをやめる とまっていた会話がはじまる」とな。なるほどねえ。